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エクマットラができるまで

 
エクマットラを設立した2003年、バングラデシュ開発研究所(BIDS)の調査によると、ダッカ市には674,178人ものストリートチルドレンが存在していました。 当時ダッカ大学の学生だった我々設立メンバーは、バングラデシュにおける社会的な格差、不正、貧困、自然災害、資本主義への盲目的な傾倒の悪影響を受ける路上の子ども達のことを憂い、日々熱い議論を交わしていました。
 

そして、学生である今の自分たちに何ができるだろうかということを考え、大学構内にいたストリートチルドレンに対して青空教室を始めました。 これがエクマットラの活動の始まりです。 青空教室を通じて継続的に子ども達と交流することによって、路上で暮らすということは貧しく生活が困難というだけではなく、それ以上に多くの危険な状況に曝されることが明らかになりました。 彼らはかけがえのない子ども時代を、売春や麻薬密売などの違法な仕事やその手助け、また市場での荷物運びやリキシャ引きなどの重労働、物乞いや紙くず拾いなどの尊厳を傷つけられるような仕事の中で、基本的な人権を奪われながら生きていかねばなりません。 そして、そうした子どもを利用しようとする大人の思惑に左右され、ギャングの手先となって暴力行為などに手を染めてしまったり、重度の麻薬中毒者になってしまったり、道を外れて社会の闇で生きることを余儀なくされてしまうのです。 我々は、彼らの生い立ち、悲しみや苦しみ、将来への不安や心情を理解するために、長い時間をかけて彼らに向き合ってきました。青空教室では基礎的な読み書きや計算といった識字教育のみにとどまらず、一般家庭で親が子に教えるような挨拶や道徳心、保健・衛生教育など社会生活に必要なライフスキルの教育を、歌や絵や遊び、踊りといった子どもたちが楽しめる情操教育を通じて行うなど、失われた子ども時代を取り戻せるように様々な創意工夫を行いました。
そうして青空教室を運営していく中で、一日のうち数時間だけ青空教室に参加するという方法では子ども達の生活を変えることはできないことに私たちは気が付きました。 青空教室で色々なことを教えても、生活の大半を過ごす場所が路上では、子ども達の人生の問題は根本的に解決できないからです。 責任が伴う判断の中でとても大きな決断でしたが、自分たちを信頼して変化を恐れずについてきてくれる子ども達のためにも、彼らの成長に必要な住環境を備えたチルドレンホームをダッカにつくることを決めました。 それは、過酷な状況に直面している子ども達が、路上での抑圧された環境から脱却し、真っ当な人間として生活する上で集団生活のルールや社会性を身に着けるため、そして子どもとして受けるべき愛情をもらえる心の居場所です。

このように2003年に何もないところから情熱のみで始まったエクマットラの活動は、子育てという正解なき挑戦や継続的な運営資金調達など、様々な試練を抱えながら乗り越えながら、現在も一歩一歩前進しています。 2018年には団体の長年の夢であったエクマットラアカデミーを開校し、現在は50人を越える子ども達がその学び舎で暮らしています。 私達は、路上の子ども達が生まれた環境に関わらずチャンスを掴み、自分自身の人生を謳歌できるようになるまでの大逆転劇を本気で信じて活動をしています。 ただ衣食住のサポートや一時的な支援を行うだけではなく、長期的な視野で教育と愛情を注ぐことで、エクマットラでは次世代のリーダーとなり得る「ホンモノの人間」が今日も育っています。
 
 
 組織概要
組織名:エクマットラ(EKMATTRA Society)
本所在地:Rashid House, House-1, Road-4, Banani DOHS, Dhaka-1213
電話番号:+8801711445779, +8801799300500,
メールアドレス:info@ekmattra.org
代表:Shubhashish Roy, 渡辺大樹
設立:2004年4月2日